Peskin 場の量子論|2.2節の解説

Peskin QFT

こんにちは!

この記事では、Peskin and Schroederの「An Introduction to Quantum Field Theory」の2.2節の内容の解説や補足を行っていきます。

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早速内容に入りましょう!(^^)

2.2 Elements of Classical Field Theory

2.2節の全体像は以下のようになっています。

  • スカラー場\(\phi(x)\)を考える
  • 作用\(S\)およびラグランジアン\(\mathcal{L}\)を導入する
  • 最小作用の原理から、Klein-Gordon方程式を導出する
  • ハミルトン形式に書き換える
  • Noetherの定理の一般論を説明する
  • 具体的に、\(U(1)\)対称性と時空の対称性(並進や回転)に対する保存カレントを計算する(←この記事では省略)

ここで、\(\mathcal{L}\)は正確にはラグランジアン密度のことですが、ラグランジアンと呼ぶことにします。(後ほど導入される共役な運動量やハミルトニアンについても同様です。)

ラグランジュ形式

場の古典論において、作用\(S\)は、ラグランジアン\(\mathcal{L}\)を用いて、

\begin{align}
S=\int d^4x \mathcal{L}(\phi(x),\partial_\mu \phi(x))
\end{align}

引数が場の1階微分までなので、場がそれくらいゆっくり変化する場合を考えています。(一般には、より高階微分を含むラグランジアンを考えても良いはずです。)

次に、最小作用の原理から、Euler-Lagrange方程式を導出します。

\begin{align}
0
&=\delta S\\
&=\int d^4x\left[\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi}\delta\phi+\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\delta(\partial_\mu\phi)\right]\\
&=\int d^4x\left[\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi}\delta\phi+\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\partial_\mu(\delta\phi)\right]\\
&=\int d^4x\left[\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi}\delta\phi-\partial_\mu\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\right)\delta\phi+\partial_\mu\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\delta\phi\right)\right]\\
\end{align}

\(\delta\phi\)の境界条件により、表面項(最後の行の第3項)はゼロになります。

よって、

\begin{align}
0=\int d^4x\left[\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi}-\partial_\mu\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\right)\right]\delta\phi\\
\end{align}

\(\delta\phi\)は任意なので、これが成り立つには、

\begin{align}
\partial_\mu\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\right)-\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi}=0
\end{align}

これをEuler-Lagrange方程式と言います。

ラグランジュ形式の利点は、Lorentz不変性が明白になることです。

一方で、解析力学で学んだように、正準量子化を目指すならばハミルトン形式に移行するべきです。

ハミルトン形式

解析力学で、力学変数\(q_i(t)\)に共役な運動量\(p_i(t)\)を、

\begin{align}
p_i(t)\equiv\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\quad\left(\dot{q}_i=\frac{dq_i}{dt}\right)
\end{align}

と定義しました。(ただし、\(N\)を系の自由度として、\(i=1,\dots,N\)です。)

これと同様の方法で、\(\phi(x)\)に共役な運動量(密度)を定義したいです。

場の理論では、離散的な添字\(i\)から連続変数\(\boldsymbol{x}\)に変わっているので、一旦\(\boldsymbol{x}\)を離散化して考えます。

\begin{align}
p(\boldsymbol{x})
&\equiv\frac{\partial L}{\partial \dot{\phi}(\boldsymbol{x})}\\
&=\frac{\partial}{\partial \dot{\phi}(\boldsymbol{x})}\int d^3y\mathcal{L}(\phi(\boldsymbol{y}),\dot{\phi}(\boldsymbol{y}))\\
&\sim\frac{\partial}{\partial \dot{\phi}(\boldsymbol{x})}\sum_{\boldsymbol{y}}d^3y\mathcal{L}(\phi(\boldsymbol{y}),\dot{\phi}(\boldsymbol{y}))\\
&=\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\phi}(\boldsymbol{x})}d^3x
\end{align}

ここで、

\begin{align}
\pi(\boldsymbol{x})\equiv\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\phi}(\boldsymbol{x})}
\end{align}

を\(\phi(x)\)に共役な運動量密度といいます。

よって、連続系におけるハミルトニアン\(H\)は、

\begin{align}
H&=\int d^3x\left[\pi(\boldsymbol{x})\dot{\phi}(\boldsymbol{x})-\mathcal{L}\right]\\
&\equiv\int d^3x\mathcal{H}
\end{align}

ここで、\(\mathcal{H}\)をハミルトニアン密度といいます。

Noetherの定理

Noetherの定理とは、対称性と保存量を関係づける定理です。

無限小パラメータ\(\alpha\)を用いた場\(\phi\)の無限小変換

\begin{align}
\phi(x)\to\phi'(x)=\phi(x)+\alpha\Delta\phi(x)
\end{align}

に対して、運動方程式が不変に保たれるとき、この変換を対称性といいます。

対称性の変換に対して、ラグランジアンには、あるベクトル場\(\mathcal{J}^\mu(x)\)の全微分項を加える自由度があります:

\begin{align}
\mathcal{L}(x)\to\mathcal{L}(x)+\alpha\partial_\mu\mathcal{J}^\mu(x)
\end{align}

このとき、カレントを

\begin{align}
j^\mu(x)\equiv\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)}\Delta\phi-\mathcal{J}^\mu
\end{align}

と定義すると、

\begin{align}
\partial_\mu j^\mu(x)=0
\end{align}

が成り立ちます。

つまり、\(j^\mu(x)\)は保存します。

この保存則は、次で定義されるチャージ

\begin{align}
Q\equiv\int_{\rm all\,space}d^3x j^0
\end{align}

が時間変化しない、すなわち、

\begin{align}
\frac{dQ}{dt}=0
\end{align}

を満たす、と表現することもできます。

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