こんにちは!
この記事では、ポアソン括弧の性質についてまとめて、その証明を与えます!
したがって、次のような方におすすめです!
- ポアソン括弧の性質について知りたい
- それらの性質の証明を知りたい
早速内容に入りましょう!(^^)
ポアソン括弧の定義
まず、ポアソン括弧の定義を復習しましょう。
2つの任意関数\(f=f(q,p,t),\,g=g(q,p,t)\)に対して、ポアソン括弧を
\begin{align}
\{f,g\}\equiv\sum_{i=1}^{N}\left(\frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial g}{\partial p_i}-\frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial g}{\partial q_i}\right) \tag{1}
\end{align}
で定義します。ここで、\(N\)は系の自由度です。
以下では、アインシュタインの規約を用いることにして、\(\sum\)を省略します。
ポアソン括弧の性質
ポアソン括弧は以下の4つの性質をもっています。
反対称性
\begin{align}
\{f,g\}=-\{g,f\} \tag{2}
\end{align}
線形性
\begin{align}
\{f,c_1g_1+c_2g_2\}=c_1\{f,g_1\}+c_2\{f,g_2\}\quad(c_{1,2}:\text{定数}) \tag{3}
\end{align}
ライプニッツ則
\begin{align}
\{f,g_1g_2\}=\{f,g_1\}g_2+g_1\{f,g_2\} \tag{4}
\end{align}
ヤコビ恒等式
\begin{align}
\{f,\{g,h\}\}+\{g,\{h,f\}\}+\{h,\{f,g\}\}=0 \tag{5}
\end{align}
これらの性質をこれから示していきます!
ただし、ヤコビ恒等式の証明は少し煩雑なので、こちらの記事にしました(^o^)
→【解析力学】ポアソン括弧の満たす関係「ヤコビ恒等式」の証明~証明の過程全部載せ~
反対称性の証明
\begin{align}
\{f,g\}
&=\frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial g}{\partial p_i}-\frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial g}{\partial q_i}\\
&=-\left(\frac{\partial g}{\partial q_i}\frac{\partial f}{\partial p_i}-\frac{\partial g}{\partial p_i}\frac{\partial f}{\partial q_i}\right)\\
&=-\{g,f\} \tag{6}
\end{align}
線形性の証明
\begin{align}
\{f,c_1g_1+c_2g_2\}
&=\frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial (c_1g_1+c_2g_2)}{\partial p_i}-\frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial (c_1g_1+c_2g_2)}{\partial q_i}\\
&=c_1\left(\frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial g_1}{\partial p_i}-\frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial g_1}{\partial q_i}\right)+c_2\left(\frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial g_2}{\partial p_i}-\frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial g_2}{\partial q_i}\right)\\
&=c_1\{f,g_1\}+c_2\{f,g_2\} \tag{7}
\end{align}
ライプニッツ則の証明
\begin{align}
\{f,g_1g_2\}
&=\frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial (g_1g_2)}{\partial p_i}-\frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial (g_1g_2)}{\partial q_i}\\
&=\frac{\partial f}{\partial q_i}\left(\frac{\partial g_1}{\partial p_i}g_2+g_1\frac{\partial g_2}{\partial p_i}\right)-\frac{\partial f}{\partial p_i}\left(\frac{\partial g_1}{\partial q_i}g_2+g_1\frac{\partial g_2}{\partial q_i}\right)\\
&=\left(\frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial g_1}{\partial p_i}-\frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial g_1}{\partial q_i}\right)g_2+g_1\left(\frac{\partial f}{\partial q_i}\frac{\partial g_2}{\partial p_i}-\frac{\partial f}{\partial p_i}\frac{\partial g_2}{\partial q_i}\right)\\
&=\{f,g_1\}g_2+g_1\{f,g_2\} \tag{8}
\end{align}
ここで、\(g_1,\,g_2\)は単なる関数なので、\(\{f,g_1\}g_2=g_2\{f,g_1\}\)などと書くこともできます。
しかし、ポアソン括弧は量子力学で出てくる交換関係(交換子)と関係があり、量子力学では関数ではなく演算子(行列)に対する演算の規則になるので、積の順番を勝手に変えることができなくなります。
(行列の積は一般に\(AB\neq BA\)であるということを思い出してください)
なので、関数の積の順番を変えない方が、量子力学への移行がしやすいです!(^^)
ヤコビ恒等式の証明
ヤコビ恒等式の証明は少し煩雑なので、別の記事でかきました!↓
【解析力学】ポアソン括弧の満たす関係「ヤコビ恒等式」の証明~証明の過程全部載せ~
まとめ
この記事では、ポアソン括弧の性質とその証明を紹介しました。
ポアソン括弧の性質をまとめると、次のようになります。
反対称性
\begin{align}
\{f,g\}=-\{g,f\} \tag{2}
\end{align}
線形性
\begin{align}
\{f,c_1g_1+c_2g_2\}=c_1\{f,g_1\}+c_2\{f,g_2\}\quad(c_{1,2}:\text{定数}) \tag{3}
\end{align}
ライプニッツ則
\begin{align}
\{f,g_1g_2\}=\{f,g_1\}g_2+g_1\{f,g_2\} \tag{4}
\end{align}
ヤコビ恒等式
\begin{align}
\{f,\{g,h\}\}+\{g,\{h,f\}\}+\{h,\{f,g\}\}=0 \tag{5}
\end{align}
それでは!