【解析力学】対称性からラグランジアンの形を制限~時間並進対称性~

解析力学

こんにちは!

みなさんは、次のような疑問をお持ちではないでしょうか?

  • 解析力学で出てくるラグランジュ形式のありがたみって何?
  • 対称性からラグランジアンの形を制限するってどういうこと?

この記事では、ラグランジュ形式のありがたみの1つとして、対称性を原理としてラグランジアンの形を制限できる、ということをお話します。

特に、具体例として時間並進対称性とラグランジアンの関係をみていきます。

早速内容に入りましょう!(^^)

ラグランジュ形式とは

はじめに簡単にラグランジュ形式の復習をしましょう。

ラグランジュ形式

ラグランジュ形式とは、ラグランジアン\(L\)を基本的な量として、最小作用の原理から構築される理論の形式のこと

ポテンシャル中を運動する質点系では、ラグランジアン\(L\)は運動エネルギー\(T\)とポテンシャル\(U\)を用いて、

\begin{align}
L=T-U
\end{align}

とかけます。

最小作用の原理によって、ラグランジアンから作られる作用\(S=\int dt L\)から、Euler-Lagrange方程式と呼ばれる運動方程式が導かれます。

このようにして構築される解析力学の枠組みを、ラグランジュ形式といいます。

対称性からラグランジアンの形が制限できる

簡単にラグランジュ形式の復習をしたので、本題に入りましょう。

力学では、系の運動方程式を立てて、それを解くことで系に存在する保存量(エネルギー、運動量、角運動量)を導きます。

一方で、解析力学のラグランジュ形式では、系に対するラグランジアンを書き下すことで、これらの保存量が存在するかどうかが、直ちにわかります。

また、ネーターの定理によって、対称性と保存量は密接に関係しています。

したがって、対称性を原理としてラグランジアンの形を制限すると、運動方程式を解かなくても系の保存量がわかるようになります。

具体例:時間並進対称性をもつラグランジアン

具体例を見ましょう。

ここで考える対称性は、時間並進対称性です。

つまり、ある一般化座標\(q_i(t)\)がEuler-Lagrange方程式の解ならば、時間を\(t_0\)だけずらした\(q_i(t+t_0)\)もEuler-Lagrange方程式の解である、ということです。

この時間をずらす操作

\begin{align}
t\to t+t_0
\end{align}

を時間並進といいます。

ただし、\(t_0\)は\(t\)に依らない定数です。

この対称性をラグランジアンに反映させるには、どうしたらよいでしょう?

結論は、ラグランジアンが時間にあらわに依存しなければ良いということになります。

系が時間並進対称性をもつときのラグランジアンの形

\begin{align}
L=L(q(t),\dot{q}(t))
\end{align}

つまり、ラグランジアンが時間\(t\)にあらわに依存しない

証明

時間並進対称性をもつラグランジアンは、あらわに\(t\)に依存しないことを証明しましょう。

まず、\(q(t)\)が一般のラグランジアンに対するEuler-Lagrange方程式の解であるとします。

すなわち、\(q(t)\)は

\begin{align}
\frac{d}{dt}\frac{\partial L(q(t),\dot{q}(t),t)}{\partial \dot{q}_i(t)}-\frac{\partial L(q(t),\dot{q}(t),t)}{\partial q_i(t)}=0
\end{align}

を満たします。

ここで、時間並進の操作\(t\to t+t_0\)をしましょう。

もちろん右辺はそのまま変わりません。

左辺は、

\begin{align}
\frac{d}{d(t+t_0)}\frac{\partial L(q(t+t_0),\dot{q}(t+t_0),t+t_0)}{\partial \dot{q}_i(t+t_0)}-\frac{\partial L(q(t+t_0),\dot{q}(t+t_0),t+t_0)}{\partial q_i(t+t_0)}
\end{align}

ここで、

\begin{align}
\frac{d}{dt}=\frac{d}{d(t+t_0)}\frac{d(t+t_0)}{dt}=\frac{d}{d(t+t_0)}
\end{align}

を用いると、

\begin{align}
\frac{d}{dt}\frac{\partial L(q(t+t_0),\dot{q}(t+t_0),\color{red}{t+t_0})}{\partial \dot{q}_i(t+t_0)}-\frac{\partial L(q(t+t_0),\dot{q}(t+t_0),\color{red}{t+t_0})}{\partial q_i(t+t_0)}
\end{align}

となります。

よって、赤く示した\(\color{red}{t+t_0}\)がないとき、\(q(t+t_0)\)もまた、Euler-Lagrange方程式の解であることがわかります。

まとめ

この記事では、対称性からラグランジアンの形が制限されることを説明しました。

特に、時間並進対称性からラグランジアンが時間にあらわに依存しない形に限られることを示しました。

本当はもっと書きたいことがいろいろあります笑

  • いわゆる解析力学の枠組みでは、空間並進対称性、空間回転対称性、ガリレイ変換やゲージ変換に対する対称性についての同様の議論(ラグランジアンの形がどう制限されるか)
  • 特殊相対論まで含めるとローレンツ変換に対する同様の議論(これは場の量子論、素粒子論、宇宙論などにつながる重要なテーマ!!楽しそう!!)
  • ネーターの定理(対称性と保存則を結ぶ定理)
  • などなど

しかし、これらについてはまだきちんと整理できていないので、追々記事にしていけたらと思っています(^^)

それでは!

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