こんにちは!
この記事では、Peskin and Schroederの「An Introduction to Quantum Field Theory」の2.1節の内容の解説や補足を行っていきます。
この本は、素粒子論や超弦理論を志す学生がゼミなどで読むであろう本です。
そのような学生の助けになるように、また、自分自身の備忘録も兼ねて、記事にしていきたいと思います。
2.1 The Necessity of the Field Viewpoint
2.1節では、場の量子論の必要性が説明されています。
場の量子論とは、量子力学と特殊相対論を組み合わせた理論です。
Peskinでは、まず「量子力学において非相対論的粒子を量子化するのと同じように、素朴に相対論的粒子を量子化できないのでしょうか?」と疑問を投げかけています。
相対論的量子力学で学ぶように、Klein-Gordon方程式やDirac方程式のような1粒子の相対論的波動方程式には負のエネルギー解が存在します。
つまり、負のエネルギーをもつ粒子を生成させると、エネルギー保存からその分の正のエネルギーを取り出せることになります。
これは真空が不安定であることを意味しており、量子論的に良くありません。
また、不確定性関係\(\Delta E\Delta t=\hbar\)により、摂動論の高次における中間状態のような多粒子状態が、時間$(\Delta t$)の間、許されることになります。(たとえ始状態が1粒子であったとしても。)
そして、自由粒子が\(\boldsymbol{x}_0\)から\(\boldsymbol{x}\)へ伝播するamplitudeを計算し、因果律について考察しています。
amplitudeは、
\begin{align}
U(t)=\left\langle{\boldsymbol{x}}\middle|e^{-iHt}\middle|{\boldsymbol{x}_0}\right\rangle
\end{align}
とかけます。
非相対論的な場合、\(H=\boldsymbol{p}^2/2m\)を代入すると、
\begin{align}
U(t)
&=\cdots\\
&=\left(\frac{m}{2\pi it}\right)^{3/2}e^{im(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{x}_0)^2/2t}
\end{align}
この式はすべての\(\boldsymbol{x}\)と\(t\)に対してゼロでないので、任意の短時間でどんな2点間であっても伝播できることを意味します。
この結論自体は非相対論的な因果律を破ってはいませんが、これが相対論的な場合の因果律の破れの兆候だろうと推測しています。
そこで今度は、相対論的な場合、つまり、\(E=\sqrt{\boldsymbol{p}^2+m^2}\)をamplitudeの式に代入してみます。
light-coneの外側 \(\boldsymbol{x}^2\gg t^2\)における漸近形を鞍点法を用いて評価すると、
\begin{align}
U(t)&=\cdots\\
&\sim e^{-m\sqrt{\boldsymbol{x}^2-t^2}}
\end{align}
light-coneの外側でもamplitudeがゼロでないので、因果律が破れています。
この問題は、場の量子論によって2.4節で議論する方法で解決されるそうです。(反粒子の導入によって)
また、スピンと統計の関係も場の量子論によって説明されます。(量子力学ではスピンが整数か半整数かでBose統計かFermi統計かを決めたけれど、これは天から与えられていたはずです。)
予告
2.2節では場の古典論(古典場の理論)について議論します。
主にラグランジアン、最小作用の原理、ハミルトニアン、ネーターの定理についてですね。
それでは!