Peskin 場の量子論|2.3節の解説

Peskin QFT

こんにちは!

この記事では、Peskin and Schroederの「An Introduction to Quantum Field Theory」の2.3節の内容の解説や補足を行っていきます。

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早速内容に入りましょう!(^^)

2.3 The Klein-Gordon Field as Harmonic Oscillators

2.3節の全体像は以下のようになっています。

  • 実Klein-Gordon場(実スカラー場)の正準量子化を行う
  • スペクトル(エネルギー固有値)を求める
  • Klein-Gordon粒子がBose-Einstein統計に従うことを説明する
  • ヒルベルト空間上の量子状態を定義する

量子力学で、「ボソンはBose-Einstein統計に従い、フェルミオンはFermi-Dirac統計に従います」と突然言われて???となった方もいるかと思います。

この節では、場の量子化を通じて、スカラー粒子(スピンゼロの粒子)がBose-Einstein統計に従うことを説明します(^^)

スカラー場の正準量子化

まず、量子力学の正準量子化を復習します。

\(N\)自由度系における正準変数\((q_i,p_i)\,(i=1,\dots,N)\)に対して、次の正準交換関係を課します:

\begin{align}
[q_i,p_j]=i\delta_{ij},\quad[q_i,q_j]=[p_i,p_j]=0 \tag{1}
\end{align}

これを正準量子化といいます。

スカラー場の正準量子化の手続きは、

\begin{align}
q_i\quad&\to\quad\phi(\boldsymbol{x}),\\
p_i\quad&\to\quad\pi(\boldsymbol{x}) \tag{2}
\end{align}

という置き換えをして(つまり場は演算子)、

\begin{align}
[\phi(\boldsymbol{x}),\pi(\boldsymbol{y})]=i\delta^{(3)}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{y}),\quad[\phi(\boldsymbol{x}),\phi(\boldsymbol{y})]=[\pi(\boldsymbol{x}),\pi(\boldsymbol{y})]=0 \tag{3}
\end{align}

とします。

ここで、場の引数は空間\(\boldsymbol{x}\)であり、時刻\(t\)は含まれないことに注意しましょう。

すなわち、Schrödinger表示で議論しています。

スペクトルの計算

場の量子化ができたので、ハミルトニアンの固有値を求めます。

そのために、場をフーリエ変換して運動量空間で議論しましょう:

\begin{align}
\phi(\boldsymbol{x},t)=\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}e^{i\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{x}}\phi(\boldsymbol{p},t) \tag{4}
\end{align}

ただし、\(\phi(\boldsymbol{x})\)は実なので、\(\phi^\ast(\boldsymbol{p})=\phi(-\boldsymbol{p})\)です。

\(\phi(\boldsymbol{p},t)\)は調和振動子の運動方程式に従います:

\begin{align}
\left(\frac{\partial^2}{\partial t^2}+\omega_{\boldsymbol{p}}^2\right)\phi(\boldsymbol{p},t)=0,\quad\omega_{\boldsymbol{p}}=\sqrt{\boldsymbol{p}^2+m^2} \tag{5}
\end{align}

量子力学で調和振動子系を解く手法である、生成・消滅演算子を用いる方法を、ここでも使います。

よって、

\begin{align}
\phi(\boldsymbol{x})&=\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{\sqrt{2\omega_{\boldsymbol{p}}}}\left(a_{\boldsymbol{p}}e^{i\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{x}}+a_{\boldsymbol{p}}^{\dagger}e^{-i\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{x}}\right),\tag{6}\\
\pi(\boldsymbol{x})&=\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}(-i)\sqrt{\frac{\omega_{\boldsymbol{p}}}{2}}\left(a_{\boldsymbol{p}}e^{i\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{x}}-a_{\boldsymbol{p}}^{\dagger}e^{-i\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{x}}\right)\tag{7}
\end{align}

(3)に(6)、(7)を代入すると、交換関係は、

\begin{align}
[a_{\boldsymbol{p}},a_{\boldsymbol{p}’}^\dagger]=(2\pi)^3\delta^{(3)}(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{p}’) \tag{8}
\end{align}

となります。

ハミルトニアンは、

\begin{align}
H=\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\omega_{\boldsymbol{p}}\left(a_{\boldsymbol{p}}^\dagger a_{\boldsymbol{p}}+\frac{1}{2}[a_{\boldsymbol{p}},a_{\boldsymbol{p}}^\dagger]\right) \tag{9}
\end{align}

となります。

ここで、第2項は無限大のc数である\(\delta(0)\)に比例します。

しかし、実験で測定できるのは\(H\)の基底状態からのエネルギー差のみなので、この無限大の定数項は無視します。

Klein-Gordon粒子がBose-Einstein統計に従うこと

また、全運動量演算子は、

\begin{align}
\boldsymbol{P}=\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\boldsymbol{p}a_{\boldsymbol{p}}^\dagger a_{\boldsymbol{p}} \tag{10}
\end{align}

となります。

以上より、\(a_{\boldsymbol{p}}^\dagger\)によって運動量\(\boldsymbol{p}\)、エネルギー\(\omega_{\boldsymbol{p}}=\sqrt{\boldsymbol{p}^2+m^2}\)が生成されることがわかります。

同様に、\(a^\dagger\)を真空に複数回作用させた状態\(a_{\boldsymbol{p}}^\dagger a_{\boldsymbol{q}}^\dagger\cdots|0\rangle\)の運動量は、\(\boldsymbol{p}+\boldsymbol{q}+\cdots\)となります。

これらの励起は別々に相対論的なエネルギーと運動量の関係式を満たすので、粒子と呼ぶことにしましょう。

そして、粒子としての意味づけができたので、エネルギー\(\omega_{\boldsymbol{p}}=\sqrt{\boldsymbol{p}^2+m^2}\)を\(E_{\boldsymbol{p}}\)と書くことにします。

さらに、生成・消滅演算子の交換関係(8)により、

\begin{align}
a^\dagger_{\boldsymbol{p}}a^\dagger_{\boldsymbol{q}}|0\rangle=a^\dagger_{\boldsymbol{q}}a^\dagger_{\boldsymbol{p}}|0\rangle\tag{11}
\end{align}

が成り立ちます。

これは2つの粒子を交換しても状態が変わらないことを意味しています。

また、同じ運動量\(\boldsymbol{p}\)をもつ生成演算子\(a^\dagger_{\boldsymbol{p}}\)を複数回かけることで、同じ量子数の粒子を複数生成することもできます。

したがって、この粒子はBose-Einstein統計に従います。

ヒルベルト空間上の量子状態の定義

いま、運動量空間で議論しているので、ヒルベルト空間上の量子状態を、運動量の固有状態で定義します。

まず、真空\(|0\rangle\)が次のように規格化されているとします:

\begin{align}
\langle0|0\rangle=1\tag{12}
\end{align}

このとき、1粒子状態\(|\boldsymbol{p}\rangle\)は\(a_{\boldsymbol{p}}^\dagger|0\rangle\)に比例しており、内積がLorentz不変になるように、その係数を決定します。

結論としては、

\begin{align}
|\boldsymbol{p}\rangle\equiv\sqrt{2E_{\boldsymbol{p}}}a_{\boldsymbol{p}}^\dagger|0\rangle\tag{13}
\end{align}

と定義します。(係数の2はconventionです。)

なぜなら、\(E_{\boldsymbol{p}}\delta^{(3)}(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{q})\)がLorentz不変な形だからです。

(13)で定義すると、内積が

\begin{align}
\langle\boldsymbol{p}|\boldsymbol{q}\rangle=2E_{\boldsymbol{p}}(2\pi)^3\delta^{(3)}(\boldsymbol{p}-\boldsymbol{q})
\end{align}

となります。

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